2016年11月第122号|4-1|あきない遠眼鏡(とおめがね)~たっすいがはいかん|

旅のとき、観光地を訪ねるのもいいが、なんでもない街並みを観察して「発見」をするのが私は結構好きです。
北京に行ったときも、中心部にあるが狭い道を歩いているうちに長屋の続く横町(胡同)に入り込んで共同便所を見つけた。(各家にはトイレがない)
驚いたのはそのトイレに入ったら、個室にドアが無く、おじさんがしゃがんで用を足しながら悠然と新聞を読んでいたことである。おじさんは驚くこともなくこちらを見るでもなく、その行為を続けた。慌てたのはこちらの方で、すみませんといったかどうかは覚えてないが慌ててとびだした。

さて所用で高知を訪れた際、妙な看板に出くわした。妙といっても看板は普通の黄色いもので「たっすいがはいかん」と書いてある。間違いなくキリンビールの看板だ。これが町中の飲み屋の前や横に置いてある。この「たっすいがはいかん」がどうにも気になった。言葉からすれば土佐弁で当地のオリジナルのコマーシャルらしいが、気になってしかたがない。しばらく歩いた末、屋台村みたいなところで思い切って聞いてみた。聞かれた人いわく「ビールは飲んだ時にがつんとくるくらいじゃなきゃだめで、薄いのはいかんということよ
(標準語で)。」ようやく納得した。
この話には後日談があり、ある日、上野駅の本屋で時間をつぶしていたときに「キリンビール高知支店」という新書版の本を見つけた。「たっすいがはいかん」の話だと直感した。
戦後のビール業界のトップを走り続けたキリンビールがスーパードライに首位を明け渡し、どん底まで落ちてからの反転攻勢が、実に高知のさえない一支店から始まったのだ。あとは読んでのお楽しみ。ビジネス本に興味のある方は読んでください。 キリンビールという大会社の大改革は「たっすいがはいかん」から始まったというわけである。奇跡を起こしたダメ支店の支店長は最後は副社長にまで上り詰める。
さらにいえばこのあとアサヒビールの「こじゃんとうまい」という看板が登場する。さあ「こじゃんとうまい」とはどういう意味?

税経センターグループ 顧問 新山 晴美

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