2018年4月第139号|4-1|あきない遠眼鏡(とおめがね)~つくる方もつくってもらう方も|

昔、ゴムの製造工場で働いたことがある。ゴムのシートを金属の容器の内側に貼る仕事でゴムライニングという。ゴムは金属と違って熱による収縮が大きい。シートを供給する分出しという工程で、4mm.のシートを出すためにカレンダーロールという大きなロールの隙間を4ミリで出してもそのあと熱が冷めていく過程で長さは短くなり厚みはすぐ厚くなってしまうので、ロールの隙間を4mm.以下で出すという職人的な技が求められていた。

加工ラインに供給されたシートの厚さには微妙なばらつきがあった。私は見習的な仕事をしていたが、それでも4.2mm.と4.3mm.の厚さの差は触ったとき分かるものだと感心した覚えがある。

さて昨年12月の新幹線「のぞみ」の台車亀裂問題は川崎重工での台車枠の加工の過程で厚さ7mm.以上の基準に対し、溶接のために最大4.7mm.まで、削っていたことが判明した。

川重の社内規定では、「台車枠の鋼材を削ってはいけない」と定める一方、溶接部分の周辺に限って「0.5mm.まで削る」ことが許されていた。しかし現場責任者は「すき間が小さくなるまで」削るように指示し、「0.5mm.を超えて削らないように」指示することを怠っていたという。鋼材の厚さが検査対象となっていなかったことについては「鋼材を削ることはもともと想定していなかった」ためとしている。

中小企業が部品を大企業に納入するときには厳しい基準とともに、たとえ5人の会社でも品質管理規定の制定が求められ、検査票をつけて納品し、少しでも狂いがあると容赦なく返品され泣かされることがよくある。大企業どうしの取引のおおらかさには開いた口がふさがらない。納品した川重も問題だが受け入れ側には検査体制、品質管理体制はないのだろうか?自動車会社から神戸製鋼に至るまでの大企業の検査データの改ざん事例をみると、世界に誇った日本の大企業の製造の権威は地に落ちてしまったようだ。

税経センターグループ 顧問 新山 晴美

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