2018年6月第141号|4-1|あきない遠眼鏡(とおめがね)~幕府をゆるがした反乱|

前期高齢者になったつれあいの退職慰労のため、九州旅行を企画した。今回の私のテーマは【「田原坂」「雲仙」「天草」を駆け抜ける】。それ以外の宿や食べ物の選択はつれあいに一任した。

田原坂から島原半島に渡って雲仙普賢岳の火砕流の爪痕をみた翌日、海岸線に沿って走っていたら「原城址」という案内が目に入った。江戸幕府創設期の島原の乱の舞台となり、天草四郎を首領に戴くキリシタンの反徒が立てこもった城である。建物はなく草に覆われた土塁のみの城跡で、20分ほどかけて登った。眼下に海を見下ろしその向こうに天草を望めた。その日は強い風が吹いていた。

一時を過ごした後、反乱の一党が作戦会議をしたとかいう通称「談合島」を左手に見ながらフェリーで天草に渡り、島で一泊してから不知火海に面した宇土半島をなぞって熊本に帰った。

帰参してしばらく経った5月1日にこの原城址を含む島原·天草のキリスト教関係遺産が世界遺産に登録指定になったと聞きびっくりした。きっと地元を含めた関係者の長年の尽力が実っての指定だったのだろう。このときを境にして、さまざまな建築や装飾が施され古城の置かれる環境は一変することだろう。

観光を除けばこれといって有効な商売の手立てがない農村にとっては、ありがたい決定だという事は容易に想像できる。

しかし私は、指定決定の前に原城を訪れることができてよかったと思った。

さまざまなデコレーションが施されたお城より、海から吹き上げる風以外に何もない城跡の方が、神に殉死していった天草四郎と農民たちを偲ぶにはふさわしいのではないかと思ってしまったからだ。

特定社会保険労務士・行政書士 新山 晴美

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