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10月に、日本の化学者である硤合憲三(そあい けんそう)教授がノーベル化学賞を受賞したと報道があった。
昨年の北川教授に続き、今年も日本人がノーベル化学賞を受賞したことをとても誇らしく思う。
さて、今回の受賞理由を見てみると「不斉有機合成における非線形効果と自己触媒反応の発見」だという。
正直なところ、まったく意味が分からない。
報道には「分子の世界の常識を覆し、ノーベル賞級と称される世界的な大発見!」とあったため、この大発見がどのようなものかを少しでも知りたいと思い調べてみることにした。
まず、テーマは中学校で習う分子に関することのようだ。物質をつくる最小の粒である「分子」には、「右手」と「左手」があり、右手の手袋と左手の手袋のように、「形は同じなのに鏡に映した関係になっていて、どう回転させてもぴったり重ならないペア」が存在するとのことだ。
さらに形は鏡に映したように同じであっても、右手型は良い薬になる一方で左手型は毒になることがあるという。
このように、形が鏡像になっているだけで性質がまったく変わってしまうため、化学の世界では「片方の手だけを選んで作る」ことが極めて重要とされている。
ここからが教授の発見である。
化学反応のスピードを速める手助け役を「触媒(しょくばい)」と呼ぶが、触媒は反応を起こすために外から別の物質を加えるのが一般的だ。
しかし硤合教授は、「反応で新しく生まれた分子自身が触媒になり、自分と完全に同じ形の分子を次々に生み出す反応」を世界で初めて発見したのである。
右手分子が1個できると、それが触媒となって次の右手分子を作り、1個が2個、2個が4個、4個が8個……と、ねずみ算式に同じ仲間を爆発的に増やす。
コインを100万回投げたとき、表が50万1回、裏が49万9999回となるように、ほんのわずかな偶然の偏り(0.0001%以下の差)が出ることがある。
普通の化学反応なら、この程度の差は無視されて半々のまま終わるが、硤合反応ではこの肉眼や通常の機械では見分けがつかないほどの極小のズレを分子が敏感に感知するらしい。
わずかに多かった側が猛烈なスピードで自分を増やし続け、最終的には「ほぼ100%対0%」になるまで偏りを拡大させてしまうのだ。
では、なぜ世界中の科学者が熱狂したのか。
実は人間をはじめ地球上のすべての生き物の体をつくる「アミノ酸」は、なぜか例外なくすべて「左手型」で統一されている。
「大昔の地球には右手も左手も同じ数だけ存在していたはずなのに、なぜ左手だけが生き残って生命の材料になったのか?」という疑問は、科学界で長年解けなかった最大の謎(生命起源のミステリー)だった。
硤合教授の発見は、「太古の地球で偶然生じたごくわずかな分子の偏りが、自分で自分を増やす反応によって100対0にまで増幅され、生命の誕生につながったのではないか」という仮説が成り立つことを、実験室のフラスコの中で、世界で初めて実証したのである。








