公文書管理法という地味な法律があります。2009年に制定された比較的新しい法律です。当時の福田康夫首相が力を入れてできた法律です。
その10年ほど前、アメリカの公文書法の改正があり、その文書公開制度で日米の沖縄に関する密約などが、おおやけにされました。秘密の公開が波及することを恐れた日本側では、外務省のアメリカ局長が大量の外交文書を廃棄してしまうといった事件が起きました。過去の文書を検証できなくしてしまったのです。
こうしたことの反省から公文書管理法の制定が考えられたのです。政治や外交、行政の文書を記録、保存して将来の検証に耐えるようにしようという目的で作られたものです。その実務にあたる国立公文書館というものもつくられました。
ここ数年の政治の分野では、文書の廃棄や改ざん、不作成といった文書にまつわる事件がとても多いですよね。森友事件、自衛隊の日報廃棄問題などがその代表格です。官僚、公務員といった人たちが、いかに目先のことを忖度して「証拠隠滅」に走っているのは嘆かわしいばかりでなく歴史の検証をも妨げているわけです。もっとも公文書管理法があるといってもその番人ともいえる公文書館に勤務する職員の数はアメリカが約2500人に対し、日本は42人というレベルです。
かつて「日本の政治は三流でも官僚は一流」と述べた桜田武日経連会長の発言があったように、官僚には「俺たちが国を支えている」といった気概があったものですが。
税経センターグループ 顧問
新山 晴美