2018年9月第144号|4-1|あきない遠眼鏡~高原野菜とフィリピン~|

妻の母の新盆ということで信州の南牧村に帰省した。南牧村は八ヶ岳山麓に広がる高原野菜の産地。「夏も涼しい」という地の利を生かして、レタス、キャベツ、白菜などを栽培している。結婚した頃は、義兄が役場に勤めながら兄嫁と両親が労働力となる典型的な「サンちゃん農業」だったが、甥が当主となって専業化した。還暦を過ぎた義兄や義姉に変わって労働力となるのは、いまやフィリピンから来る技能実習生。「あの人たちがいなければ、もう農業は無理。」と義姉は断言する。

村は、2008年からフィリピンの「バンゲット州ラ・トリニダッド町」から農業研修生を受け入れ始めた(それまでは中国から)のを縁に、住民相互の交流を考え、同町への技術普及にも力を入れ、婦人グループの相互訪問なども行ってきた。技術普及の一つとしては、イチゴの栽培を伝授し、今では同町の主要栽培品目にもなっているのだという。ラ・トリニダッド町は標高千メートルを超える高地にあるためフィリピンにしては冷涼でイチゴの栽培に適しているのだという。その点では高原野菜をつくる南牧村と共通点があったわけだ。

昨年秋に、相互交流団の一員として同町を訪れた義姉は、町長を表敬訪問したり、白バイに先導されて町を練り歩いたりして恥ずかしかったわ、と言いつつ、実習生の実家を訪れたときのことをこんな風に語ってくれた。

「崖みたいな斜面に畑が切り開かれていてね、農薬を散布するにも噴霧器を背負って回るようなスタイルだし、なっている白菜ときたら黄色くなっていてね、涙が出てくるようだったわ。」「実習に来てもそれが故郷でどれくらい生かせるのか、ため息が出て。それでも日本で稼ぐ現金があの人たちには貴重なんだなと思うしかない。」

いま日本の農業は、外国人労働力なくしては継続できないところまで来ている。技能実習生という建前も破綻寸前だ。

そんな中で、村単位での交流を行っている南牧村の取組みには注目した。

税経センターグループ 顧問
新山 晴美

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