2019年9月第156号|4-1|あきない遠眼鏡(とおめがね)~小さな委員会|

昨年夏、依頼を受けてP社(社員200名ほど)で「パワーハラスメント(以下、パワハラと略)」の全員研修を行った。
1年経って、P社から具体的なパワハラの相談を受けた。管理職のM氏に対する部下の女性からの告発である。告発は日付をおって10枚の紙にしたためてあった。読めば、「うむ、なるほど」という内容である。P社には前述の研修の際にパワハラ委員会がつくられ苦情の窓口になっている。役員はひとりだけで中堅の社員4名を男女バランスよく配置した理想的な委員会である。この委員会に呼ばれていっしょに話し合いを持った。M氏は昨夏の研修の直後に周囲に対して「俺のパワハラは改まらないよ。」と言っていたというから何をかいわんやである。しかし、委員会での検証が進むうちに事件の別な側面も見えてきた。告発者のKさんが、結構、身勝手な人だとか、他の人に対してあたりちらすとかいう内容である。事件の解決はまだ先になるが、一筋縄ではいかないパワハラの特徴が浮かび上がった形。人間関係に寛容さが失われると無限にパワハラは増幅していくなという思いに駆られた。
5月に労働施策総合推進法を始めとする法改正で事業主にパワハラ防止義務が課されることになった。(中小企業は来年4月から努力義務で、その2年後に相談体制の整備などの義務が課される。)罰則規定はないというが、取り扱いを誤れば、会社にも損害賠償請求は及んでくる。
世の中に寛容さが失われていくことの反映として、人間関係がぎすぎすし、はけ口が弱い人に向きやすい。会社として考えれば、管理職の人間力を大いに涵養(かんよう)していくことが求められているようだ。
P社のパワハラ委員会の歩みに、少し勇気をもらった気持ちになる。しかし、それも最高責任者のふところの深さが前提だが。

税経センターグループ 顧問 新山 晴美

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